精進料理と菜食主義の料理の違い、精進料理に入れてはいけない野菜とは

精進料理はもともと仏教や道教において修行のために食する料理である。

仏教の戒律では肉食は殺生にあたるため精進料理にも当然、肉は入っていない。

だが、精進料理は「ベジタリアン(菜食主義)」や「ヴィーガン(絶対菜食主義)」が食する料理とは少し異なる面を持つ。

では、どういった違いがあるだろうか?

精進料理と菜食主義における料理の違い

「精進料理」と「菜食主義における料理」の根本の考え方は以下の通りである。

  • 菜食主義
    「健康、動物の権利の観点、道徳や宗教的な側面により、植物性の食物のみで食生活を行う」
  • 精進料理
    「仏教の戒律に基づき殺生や煩悩への刺激を避けることを目的とした料理」

「宗教的な側面」により菜食主義を行っているのであれば、精進料理も菜食主義の一種となるが、双方は必ずしもイコール関係となるわけではない。

五葷(ごくん)

精進料理では「殺生を禁ずる」という理由以外に「煩悩を刺激しないように」という理由で、肉食を禁じている面がある。

これと同じく、匂いの強い食材も「煩悩を刺激する」という理由により禁じられている。

これを禁葷食(きんくんしょく)という。

「葷(くん)」と言う文字は、

  1. 主にネギ類に属する、ニンニクやニラなどの臭いの強い野菜
  2. ショウガなどのように辛みのある野菜

などのことを指す。すなわち、

臭いが強い食材は野菜といえども精進料理では使えない

のである。

特に、ニンニク・ニラ・ネギ・ラッキョウ・ヒルの5つは「五葷(ごくん)」と呼ばれ、精進料理では避けられるべき食材となっている。

乳製品や卵

菜食主義においては、動物性由来のものは肉以外にも「卵や乳製品も摂取しない」ことが基本である。しかし精進料理に関しては、時代や国・地域・宗派などによって乳製品や卵を許容していることがある。

初期の仏教において、釈迦はお布施を受けて牛乳の粥を食したとも言われる。

三種の浄肉

精進料理では、肉を使用することはないが、僧侶が肉を食さないとは限らない。

大乗仏教では肉食そのものが禁止されているが、小乗の仏教(タイ、ミャンマー、カンボジア、ラオスなど)においては「肉食は絶対禁止」という訳ではない。

初期の仏教においては「不殺生の戒を犯さない布施の場合は肉食してよい」という考えがあった。

これを三種の浄肉(さんしゅのじょうにく)という。
三種とは以下の3つの条件を満たした肉のことを指す。

  1. 食する動物が殺されるところを見ていない
  2. 自分に供するために、その動物を殺したということを聞いていない
  3. 自分に供するために、その動物を殺したということを知らない

すなわち、「鳥が殺されたところを見た」場合や、「お坊さんに食べてもらうために鳥を焼いてきました」と言われた場合は、その鳥を食べることはできない。
しかし、上記3つの条件を満たしている場合は、肉食も許されるのである。

また、日本は主に大乗仏教であるが、明治政府の命令以来、僧侶の肉食が許されている。

精進料理は、基本的に「修行期間」に食するものであり、「修行期間」以外であれば僧侶であっても肉を食する。