「御陰(おかげ)」と「所為(せい)」
「御陰(おかげ)」と「所為(せい)」について。
自分が周りから受ける影響の結果を表す言葉として、「~の御陰(おかげ)」と「~の所為(せい)」という2つの言い回しがある。
しかし、「御陰(おかげ)」と「所為(せい)」では意味合いが全く異なる。
以下に、その意味の違いを辞書から抜粋した。
- 御陰(おかげ)
- 神仏のたすけ。加護。また、人から受けた恩恵・力添え。 (広辞苑)
- ある事や物が原因となって生じた結果。効果・利益、また望ましくない結果や影響にもいう。(大辞林)
- 所為(せい)
- しわざ。上の語句をうけて、それがある物事(多くは、よくない物事)の原因・理由であることを示す。(広辞苑)
- ある(悪い)結果を生じた原因・理由。(大辞林)
「御陰」は、広辞苑では、望ましくない影響について言及していないが、
大辞林に書かれている内容に従った場合、「御陰」は「望ましくない結果や影響にもいう」とある。
この内容に従って、単純に自分が受ける結果が
プラス(ポジティブ)かマイナス(ネガティブ)かに置き換えた場合、以下のような式が成り立つ。
- 「御陰」 = プラス影響・マイナス影響の両方を表すことができる。
- 「所為」 = マイナス影響を表す。
以下のような例文に当てはめると、2 の例だけが正しくないことになる。
例文:
- [○] ~さんのおかげで大儲けした ←– プラスの影響
- [×] ~さんのせいで大儲けした ←– プラスの影響
- [○] ~さんのおかげで大損した ←– マイナスの影響
- [○] ~さんのせいで大損した ←– マイナスの影響
しかし、例3のようなネガティブな意味での「おかげ」という言い方は用例が少ないように思える。
普段の生活内における会話でも、「おかげ」をマイナスイメージとして捉える場合、それほど、強いマイナスではないのではないだろうか。
すなわち、上記の例文1.3.4は、言葉で感じ取ることのできるプラスとマイナスの影響範囲は、以下のような違いがあると思われる。
↑
│
[より大きなプラス影響]
│
│
│ 例文1 の「御陰(おかげ)」
│
+ │
-------------------
- │
│
[小さなマイナス影響]
│
│
│ 例文3 の「御陰(おかげ)」
│
│
[より大きなマイナス影響]
│
│
│ 例文4 の「所為(せい)」
│
↓
マイナス影響の場合は「所為(せい)」の方が、より大きなマイナスであり、
「御陰」は比較的小さなマイナス影響を表すことが多い。
「所為」のマイナスイメージが強いのは、本来の意味にポジティブな意味が含まれていないからであろう。
逆に「御陰」のマイナスイメージが薄いのは、
もともとの意味に「神仏の影響」が備わっているからではないだろうか。
すなわち、「御陰」のマイナスの意味は、「因果応報 によって、マイナスの影響を受けただけである」という考え方である。
例えば、前述した例文を「~さんのおかげ」のような人間ではなく、例えば「雨のおかげ」のような自然が及ぼす影響に置き換えてみるとどうだろう。
- ~さんのおかげで、大損した。
- 突然、雨が降ってきたおかげで、びしょ濡れになってしまった。
1の例文には、やはり何となくではあるが、違和感がある。
しかし、2の例文には違和感がないように思える。
これは、日本の八百万の神の考え方が影響していそうである。
すなわち、「自然には神が宿る」
「雨 = 自然」であり、「自分がびしょ濡れになったのは、自然に宿った神が因果応報によって、自分に罰を与えたにすぎない」と言った具合である。
「御陰」という語は、こうした意味が含まれているがゆえに、プラスの意味では、より大きなプラス。
マイナスの意味では、程度の低いマイナスのイメージがあるのではないだろうか。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません